クラーラとフランカ Klára és Franka
昔々、二つ頭の黒鷲がたくさんのゆりかごを統べていた昨日の時代、
真珠の街を流れるドナウ川の水底で、睡蓮の竜と糸紡ぎの魔女が出逢った。
時は19世紀末、オーストリア=ハンガリー帝国のもう一つの首都ブダペシュト。科学文明が人の世界を度巻しつつあったこの時代、この街のどこかに、魔法使いや妖精たちの衣服をも手がける小さな仕立屋があった。
屋号は「クラーラ・エーシュ・フランカ」、通称「睡蓮の仕立屋」。その店で服を仕立ててもらうために必要なのはお金でも宝石でも称号でもなく、どこからともなく届けられる〈睡蓮の仕立て券〉なのだという。年若い人間の〈夫婦〉が共同で営んでいるとの触れ込みなのだが──。
「クローゼットの向こうがわへようこそ。睡蓮の仕立屋が歓待をもって、あなたの衣服をお仕立ていたします」
これは悲劇を拒みつづけた竜と魔女が紡ぎ縫う、歓待の物語である。
序繍 竜と魔女の婚姻譚
第一繍 霧の魔女とツバメの妖精のデビュタント
第二繍 妖精伯ヴァイのアルスター・コート
登場人物
用語解説
資料(ファッション)
この作品はフィクションです。実在の人物、国、団体等とは一切関係ありません。
This is a work of fiction. Names, characters, businesses, places, events and incidents are either the products of the author’s imagination or used in a fictitious manner. Any resemblance to actual persons, living or dead, or actual events is purely coincidental.