最終更新 24/9/11
はじめに
必ずご一読ください(折りたたみ)
※ハンガリーでは姓・名表記が一般的のため、本作でも姓・名の順で記載する。ただし、本人の出身地や所属コミュニティ先において名・姓表記が標準の場合はならって記載する(見分けがつくよう、名にマーカーを引いてます)
※本作で主な舞台となる19世紀末は、ゲイ・レズビアンのセクシュアルが「同性愛者」として認知されはじめた時代であり、男性/女性・シスジェンダー・alloへテロセクシュアル・ニューロティピカルを除く性・ジェンダー・ニューロエイティピカル等のスペクトラムのひとびとは各々を示す言葉・名称をまだ獲得していない。しかし、これらに属する人間は古今東西より男性/女性、シスジェンダー、alloヘテロセクシュアル、ゲイ、レズビアン、ニューロティピカル等のアンブレラタームにおいて存在していたため、登場人物紹介においては2020年代時点で獲得されている言葉・名称を採用することとする。そして、〈現代を生きる我ら〉が望んだ言葉/名称を獲得したときは適宜採用/クィアしていくものとする
※記載されている性・ジェンダー・セクシュアル・ニューロ等について、各キャラクターはそれらを代表するものではない
※各人物に記載されている情報は1896年時点のものである
※本編未登場の人物については展開によって多少の調整が入ると思われるのでご了承ください
睡蓮の仕立屋
イレーシュハージ・クラーラ Illésházy Klára
18歳 she/her/彼女 シスジェンダー/Q 一人称:わたし
主人公。人間であり竜。フランカのパートナー。睡蓮の仕立屋「クラーラ・エーシュ・フランカ」の共同オーナーであり、店の管理や経営、接客を担当している。伯爵家に育てられた元ご令嬢で、気立てが良く物怖じをしない。
人間として暮らしているが、〈竜の棲閾〉の後継者として人間の母から生まれ落ちた竜の幼体である。しかし本人は至って平和主義者で養父譲りのお人好しであり、竜であることに負い目こそないものの「人間と共に暮らしていくこと」を望んでいる。フランカを家族のように心から慕い、フランカの幸せを誰よりも願っている。人間社会に対してはフランカと結婚した〈妻〉として振る舞うが、実際の関係はクィア・プラトニック・パートナーにあたる。
生成色を基調とするフリルが多めのワンピースドレスと絹の手袋を組み合わせて着ていることが多い。首にオパールのブローチがついたチョーカーをつけているが、これは竜の力を抑えるための強力な魔法道具のため、入浴時も外さない。
竜でありながら火が大の苦手で、火を扱う物事が一切できないのが悩み。
身体的な特徴など
暁の虹彩が差し込む空色の瞳。黒茶色の直毛を肩上で切りそろえて下ろしているが、成人女性は髪を長く伸ばして髷にしてまとめるのが当時の常識のため、初対面の人間をいつも驚かせている。背中と両手の甲にはオパールのような鱗が生えている。人間としてはシスジェンダー女性と自覚しているが、竜としてはQになる
サボー・フランカ Szabó Franka
24歳 they/them/彼人 ノンバイナリー/Q 一人称:私
主人公。人間。クラーラのパートナー。睡蓮の仕立屋「クラーラ・エーシュ・フランカ」の共同オーナー。婦人服から紳士服まで衣服の仕立てを一手に担う魔女であり、銀のシャトレーヌを腰から常に下げている。プライベートや縫製時は婦人服を、人前に出るときは紳士服を着る。「サボー・フランカ」は教会簿に記録された姓名ではないが、教会簿に記録された名を使用するのは双子のきょうだいと対面しているときのみである。人間社会に対してはクラーラと結婚した〈夫〉として振る舞うが、実際はクィア・プラトニック・パートナーの関係性。命の恩人であるクラーラのことを心から慕い、他者のために動いてしまいがちなクラーラの身を常に案じている。物腰の柔らかい穏やかな性格だがやや人見知りの傾向があり、特に面識のないシス男性には身構えがち。
最近はティーガウンタイプのドレスにはまっている。縫製時はテイラーメイドの婦人服にエプロンを着ている。ラウンジスーツはイタリアデザインのほうが好みだが、細身の身体が強調されることが紳士服を着る状況では不利に働くため、定番のイギリスデザインのスーツを着ている。婦人服を着るときは服のデザインやアクセサリーで〈女らしい〉特徴とされる柔らかい輪郭や雰囲気を強調させ、紳士服を着るときは〈男らしい〉身体的特徴があえて目立つようにスタイリングする。服装に関わらず、〈男〉扱いされることを嫌がっている。
身体的な特徴など
すみれ色の瞳。緩くウェーブがかったローズ・ブロンドの髪を長く伸ばしている。精巣摘出などの外科的施術は受けていない。現代で言うところの思春期の成長を抑制する施術をクラフト=エビング博士から受けており、成人してからもホルモン療法を続けている。大柄になりやすい家系のわりに細身。乳房がある(ジレとジャケットを羽織ると目立たなくなるくらいのサイズ)。体格については「血縁の男性と比較したら」なので決して小柄というわけではなく、注意深く観察すると骨格は男性の特徴が見出せる。声変わりも経験している。一方で輪郭は柔らかい印象があり、バレエを習っていた名残で身体も非常に柔らかい。〈男〉扱いされることを内心ではとても嫌がっており、かと言って女になりたいのかと他者から問われると「うーん……そういうことではなくて……」と言いよどみ口をつぐんでしまう。彼人自身も、1896年時点では自身のジェンダーを掴みかねている
シェレン Schellen
獣型の妖精。クラーラの使い魔で、クラーラやフランカ、ユリの傍にいることが多い。首に大きなベルを提げている。鈴のような美しい足音を立てるが、鳴き声は「むぅ」。フランカが大がかりな魔法をつかうときはクラーラの協力が必要になるため魔力を〈パス〉を担う役割こそあるが、たとえば家事妖精たちのような役割などは特になく気ままに過ごしている。何かをしてくれるわけではないが、誰かが落ち込んでいるとそっと寄り添ってくれる
身体的な特徴など
兎のような長い耳、猫のような二股の尾、そしてその背には睡蓮の花びらのような翼が生えている。全長は大人の膝の上でぎりぎり丸まって眠れるくらいの丈。
ハトヴァニー・エデン Hatvany Ödön
25歳 he/him/彼 シスジェンダー 一人称:僕(身内以外に対しては私)
人間。ルユザの夫であり、ユリの父。フランカが気を許している数少ないシス男性の友人。根は気難しくプライベートでは眉を寄せたお澄まし顔をしているものの、ビジネスではにこやかに笑う好青年として振る舞っている。
普段は医者の卵としてクラフト=エビング博士の下で働いているが、ユダヤ系金融一族ハトヴァニー家出自の立場を活かして金融や投資も扱っており、睡蓮の仕立屋に出資している。魔法そのものは使えないが、魔力の補填さえあれば魔法道具を使うことは可能。魔法に関する知識や常識は誰よりも長けている。イギリス式のラウンジスーツが好みで薄くチェック柄が入ったジャケットをフランカに仕立ててもらっているが、仕事柄白衣を着ていることが多い。
身体的な特徴など
栗色の巻き毛。ヘーゼル色の瞳に丸眼鏡をかけている。髭を生やそうかと思ったことがあるが、フランカから全力で止められてる。
ハトヴァニー・ロージャヴェルジ・ルユザ Hatvany Rózsavölgyi Lujza
26歳 she/her/彼女 シスジェンダー 一人称:あたし(エデンと結婚する前は俺)
人間。エデンの妻。ユリの母。赤みがかった美しい黒髪を剣のような装飾の髪飾りでまとめている。火の魔法を扱うのが得意で、睡蓮の仕立屋ではコックとして働いたり、オスカールの仕事をサポートしている。普段はおしとやかなふるまいをするが隙がなく、腕っ節が強い。時折口調が勇ましくなる。ミリタリー調のテイラーメイドで仕立てられたアンサンブルドレスを着用している。実母はロマ(ジプシー/ツィガーニ)出身だが、物心がつく前にロージャヴェルジの一族に引き取られたためロマとしての風習を引き継いでいない。
身体的な特徴など
艶やかな緑色の瞳と赤みがかった黒髪をシニヨンにしてまとめている。うっすら腹筋が割れるぐらいには身体が引き締まっている。大きい胸は「とある仕事をしているときは」正直邪魔と思ってるので、フランカが特注で作った下着には助けられてる
ハトヴァニー・ユリ Hatvany Juli
7歳 she/her/彼女 一人称:ユリ
人間。エデンとルユザの子。皆からはユリシュカと呼ばれ可愛がられている。魔法を使う素質があるようだが……。赤いタータンチェック柄のエプロンドレスを着ており、エプロンにはマルギットが刺してくれたバラの刺繍が入っている。盾の形をした銀のブローチを常に身につけている
身体的な特徴など
緑の瞳と赤い巻き毛を持ち、その毛先は燃える炎のように揺らめいている
キシュ・マルギット Kiss Margit
16歳 she/her/彼女 ASD 一人称:マギー(私にふりがな)
人間。睡蓮の仕立屋に住み込みで働く針子。針子としての腕は一人前であり、特に刺繍はフランカを凌ぐ腕前。死霊を寄せ付けず、魔法や妖精による精神汚染(魅了や取り憑きなど)が一切効かない特異体質。裏表のないまっすぐな性格で、表情の変化こそ乏しく全く笑わないものの、動作に感情の動きが表れるのでわかりやすい。師匠であるアルター夫人に拾われた孤児であり、ラウラに出会うまでは言葉を一切発しない子供だったという。おしゃべりは得意でなく専ら聴き役に回るが、口を開くと一言一言丁寧に話してくれる。自ら仕立てた刺繍入りのアンサンブルドレスとエプロンを組み合わせて着ている。
身体的特徴など
青色の三白眼。オリーブ色がかった茶髪を三つ編みのおさげにしている(肩甲骨くらいまで長さ)。痩せ型で小柄のため、実年齢より幼くみられがち。指は長年の針子勤めでタコが目立つ
ラウラ・クラリ Laura Kralj
17歳 she/her/彼女 シスジェンダー 一人称:私
人間。睡蓮の仕立屋に住み込みで働くハウスメイド・針子見習い。マルギットとは親友。妖精や死霊を引きよせやすい体質だが、愛想のよいはきはきとした性格。綺麗好きで掃除や洗濯もてきぱきと行い、身だしなみの清潔感を大事にしている。時間配分を管理することが得意なので、縫製で過集中になりがちなマルギットへの声がけなども行っている。恋話が大好きで、いつか燃えるような優しい恋をしたいと憧れている。クロアチア・スロベニア系移民の生まれで身分が低く、体質もあいまってマルギットに出会うまでは苦労を重ねていた。睡蓮の仕立て屋で働いていることを誇りに思っており、オーダーメイドで作ってもらった仕事用の薄紫色のエプロンドレスをとても気に入っている。マルギットの声掛けに必要だろうと、エデンから渡されたお古の懐中時計を大事に使っている。
身体的特徴など
海のように碧い大きな瞳で、まつ毛が多い。ストロベリーブロンドを高い位置でシニヨンにまとめており、おでこを出している。下ろすと腰の上ぐらいまであるが、人前では下ろしたがらない。肌の色はオークルが強め。ふっくらとした丸っこい体型であることを本人は気にしている。
ユハース・オスカール Juhász Oszkár
19歳 he/him/彼 シスジェンダー 一人称:拙(素はオレ)
人間。羊飼いの物静かな青年。目が光に弱いため、色付きのゴーグルを常に装着している。睡蓮の仕立屋のすぐ近くに広がる丘陵地で、羊を主に牛や鶏など様々な家畜を飼育している。睡蓮の仕立屋では庭の手入れや運搬を担当しており、裁縫道具や建具などの修繕も行う。睡蓮の仕立屋と取引している鍛冶妖精から気に入られており、手ほどきを受けている。基本的に敬語と丁寧な口調で人と接する。ラウラに恋しているが隠しており、マルギットを気にかけている。カルパティアの山岳地帯出身で、故郷の民族衣装を模した日差しよけの厚手のケープを羽織っている。
身体的特徴など
灰の瞳とチャコール寄りの灰色の髪。外にいることが多いため日焼けしているが、ゴーグルをつけるようになるまでは陽当たりのいい場所に出られなかったため血色の悪い色白だったらしい。背はフランカやエデンより低いが、肉体労働が多いこともあり体格はがっしりしている。脚力が強く、崖から崖へと飛び移るような動作も難なく行う。
仕立屋の常客
ヴァイ・ツェツィル Tündérgróf Vay Cecil (Gróf)
20半ば(外見) he/him/彼 トランスジェンダー 一人称:俺
人間。ドナウ侯直属の精鋭部隊「妖精騎士団」のトップに君臨する妖精伯の一人で、帝国内でも指折りの魔法使い。銀のサーベルを帯刀しているが、人前では魔法で隠している。クロアチアとトランシルヴァニアを除く広大なハンガリー王国領を管轄としている。アンニュイな雰囲気を醸し出しながら、粗暴な口調と尊大な態度が目につく美青年。妖精伯でいるうちは不老不死のため、実年齢が一致していない。アンネを内縁の妻として常に引き連れている。ヘビースモーカーで、葉巻を愛好している。生家は古い伯爵家だが、ツェツィルの親の代で落ちぶれてしまったという。妖精伯としてはクラーラの監視役を担っている一方、クラーラの養父カールマンの死後は後見人としての立場で関わっている。糊の効いたハイカラーシャツと黒のトラウザーズに刺繍入りのジレ、そして強力な魔法が仕込まれた黒のアルスターコート/ジャケットを羽織っている。
身体的特徴など
ピンクのハイライトが入った少し癖のある黒髪を緩くかきあげている。乳房・卵巣・子宮は全て摘出済。ホルモン療法にあたる施術を定期的に受けている。骨格だけは「女として生きざるをえなかった」時代から変わらないものの、喉ぼとけは出ており体型も筋肉質。若干だが声も低くなっており、クリトリスも肥大化している。
アンネ・ローレライ Anne Loreley
20〜22歳くらい(外見) she/her/彼女 シスジェンダー 一人称:アンネ
人間であり人魚。実の親は人間だが、チェンジリングによって人魚に育てられた。人魚の生活圏に適応した奇跡の存在で、クラフト=エビング博士も舌を巻いたという。人間としてはツェツィルの内縁の妻、人魚としてはツェツィルの使い魔である。歩くのがあまり得意ではなく、ツェツィルの周囲を常に浮遊しているか、ツェツィルの影に隠れている。黙っていれば妖艶な雰囲気の美女だが、口を開くと天真爛漫な性格があらわになる。
緑色のツーピースドレスを好んで着るが、コルセットは着用していない。ドレスもまた、人魚形態に合わせて変化するようフランカの魔法が仕込まれている。
身体的特徴など
ぱっちりとした翠玉色の瞳。下ろしっぱなしの亜麻色の長い髪はカールしながら宙をふわふわと舞っている。絵画のモデルになれそうなほど美しく艶めかしい女の体躯だが、人魚の体質が手伝っている。人魚になると翠玉色の髪と肌に変わり、瞳は白目まで真っ赤にそまり、腰から下の臀部と脚は魚の鱗で覆われて尾びれとなる。その身丈はツェツィルに巻きつけるほど長くなることもできる。
シャシュ・ロッテ Sasu Rotte
15歳 she/her/彼女 シスジェンダー 一人称:あたし
人間。相棒の妖精トビーとともに、ブダ側の古い市街地に構えられた薬屋を切り盛りする年若い娘。芯が強く勇敢な性格である一方、馬鹿にされたり挑発されるとすぐにカッとなる年相応の姿も見せる。血筋はドイツ系だが、ハンガリーで生まれ育ったことから名前以外はハンガリー式で名乗っている。〈霧〉を領域とする「理の魔女」の候補者であり、理の魔女のデビュタントとされる「ディアーナの夜」への旅立ちを控えていた。しかしとある事件に巻き込まれて睡蓮の仕立て屋を訪ねることになる。母子家庭育ちだったためお下がりの服しか着たことがなく、日々の生活に追われて服装に気をかけたことがなかった。マルコーという、榛色の髪と瞳を持つ幼なじみの青年がいる。
身体的特徴など
豊かな赤毛を三つ編みのおさげにしてまとめており、緑色の瞳は鮮やかで、頬にはそばかすが目立つ
トビー Tobi
一人称:俺
ツバメの人型妖精。ロッテの使い魔であり相棒。常にロッテの肩に乗っている。乱暴な口調と少し穿った物言いが目立つが常に冷静で、ロッテとその将来を誰よりも慮っている。高級商店街で拾ったリボンの端切れがお気に入りで、首に巻いている。
身体的特徴
赤い瞳と直毛の黒髪。上半身は人型だが、下半身はツバメの脚と尾になっている。背から生えている羽根は片方のみ
グンデルフィンガー・ラースロー Gundelfinger László
29歳 he/him/彼 シスジェンダー 一人称:俺
人間。軍人。魔法は使えないが、妖精たちの姿は見えている。実年齢よりも老けてみられることが悩み。どことなく面影がフランカに似ているが……? 軍から支給されている華やかな色合いの軍服を常に着用しており、好みは特になし(興味がない)。
身体的特徴など
青い瞳。ローズブロンドの髪を短く切ってオールバックに固めている。ひげを生やしている。目元と眉間に皺がよりがち。大柄で屈強な体格を持つが、軍人であることもあいまって威圧感を与えがち。
その他
イレーシュハージ・カールマン Őrgróf Illésházy Karlmann Gróf
享年71歳 he/him/彼 シスジェンダー 一人称:私(若い頃は僕)
人間。クラーラの養父で魔法使い。故人。中世より続く由緒ある辺境伯*出自の人格者で、帝国内での魔法使い・魔女の権利向上に役目を果たし、様々な人に慕われた。貴族でありながら妾を設けず、マーリアただ一人を妻として愛したと語られている。ツェツィルとは昔馴染みであり、妖精騎士団時代にはその片腕として活躍した。彼の代をもってイレーシュハージ伯爵家は断絶し遺産は有名貴族や国営の博物館に献上されたが、クラーラが育った小さな領地のみはドナウ侯の推薦を得てクラーラに引き継がれている。
*妖精や魔法使いたちの前では辺境伯(Őrgróf)の称号を使うが、一般人の前では伯爵(Gróf)を使う。これは19世紀時点の人間社会ではすでに「辺境伯」の称号が廃れているため
イレーシュハージ・マーリア Illésházy Mária Őrgrófnő
享年68歳 she/her/彼女 シスジェンダー 一人称:わたくし
人間。クラーラの養母で魔女。故人。過去に迫害されることの多かった「魔法を使う女性たち」の権利向上に夫を通じて貢献した。夫のカールマンとは相思相愛の仲睦まじい夫婦であり、ツェツィルとは幼馴染の親友だった。母になれなかったことを内心では深く悔やんでいたが、晩年にクラーラの養母となったことでその無念が浄化された。クラーラが人間社会で生きていけるよう淑女としての振る舞いと領主としての教育を徹底的に仕込み、フランカには魔女としての基礎を授けてアルター夫人に託した。
オリハ Olha
10歳前後(外見) he/him 一人称:ぼく
家守の妖精で、人型にも獣型にもなる愛らしい少年。東の地から流れてきたアジア系で、家守の妖精と名乗ってはいるが正確には妖怪にあたる。現在はヴァイ家の家守妖精として留守にされがちなその家を管理している。かつてはイレーシュハージ家に仕えており、マーリアとカールマンの過ごす家を守り、クラーラやフランカの成長を見守ってきた。家事が大好きで世話焼きだが、恋愛ごとに関しては「うぶ」な反応を見せ、ツェツィルとアンネが隠れずに睦み合う場に遭遇すると顔を真っ赤にしてその場を飛び出してしまうらしい。子ども向けの馬丁を模した衣服の上にフランカが探してツェツィルが入手した故郷の衣服「ハオリ」を好んで着ているが、その「ハオリ」が実は大人の女性用であることは胸の内にこっそりしまっている(フランカの魔法でサイズは調整されている)。
身体的特徴など
人型時は狼のような耳とふさふさの尻尾を持ち、毛先が跳ねた黒髪とつぶらな赤い瞳を持つ。目尻に紅のアイラインが入っている。獣型時は2人ほどの成人を背中に乗せられる大きな漆黒の狼の姿になるが、こちらの姿はめったに見せない。
アルター夫人 Alternő
50前後 she/her/彼女 シスジェンダー
人間。睡蓮の仕立屋にとっては先代にあたる「アルター&ネー」の女主人でありフランカとマルギットの師匠。みなしごだったマルギットにとっては養母に近い存在だった。出張先のパリで行方不明となって今も見つかっていないが、彼女の持っていた〈ギフト〉がフランカへ継承されたことで死亡したとみなされている。
クラフト=エビング博士 Dr.Krafft-Ebing
40歳前後(外見) he/him/彼 シスジェンダー? 一人称:小生
魔法使いや妖精たちを診る医者であり研究者。〈古の妖精〉と名乗っているが精霊のほうが近いらしい。普段はウィーンの開業医として人間社会に溶け込んで生活している。
人間の性について研究しており、当時の人間社会で見いだされていなかったトランスジェンダーやノンバイナリーなどの存在に気づいている。本来ならばこの時代には確立していない医療施術を提供することが可能で、ツェツィルやフランカが世話になっている。
一人で全ての患者を診ているわけでなく、エデンなどの人間や妖精のスタッフの他に「端末」と呼ばれる複数の分体を持って活動しており、記憶や経験は共有されている。
身体的特徴など
プラチナブロンドの直毛を長く伸ばしている(手術のときはちゃんとまとめてる)。青い瞳。耳は長くとんがっている。典型的なエルフの外見。本体の身長は高い。一般人の前に出るときはその時代の流行に合わせて外見を調整してる。分体は顔の造形と目の色と髪の色だけ同じで、年齢や体型や髪型や好み等異なるなど個性がある。
ドナウ侯 Donaufürstin
she/her/彼女 一人称:余/わらわ
〈ドナウ圏〉の妖精たちを統べる女王であり、〈古の妖精〉たちが住まう異界オペレンツィアへ繋がる門を守護する精霊。人間と妖精によって構成された精鋭部隊「妖精騎士団」を創設し、各拠点に不老不死などの様々な特権を与えた魔法使い/魔女を妖精伯として配置することでその広大な領域を管理している。竜であるクラーラを警戒し、彼女が人間としてフランカと「結婚」するまではツェツィルやヨハーンを通じて監視態勢を敷いていた。現在クラーラとは同盟関係にあたる。二つ頭の黒鷲を従えるハプスブルク家とは協定を結んで中立関係にあるが、昨今の家長がその能力を落とし始めていることに警笛を鳴らしている。
身体的特徴など
上半身は鱗に覆われた妙齢の女だが、下半身は樹木の根となって地や水に根付いている。山葡萄の蔓のような髪を長く伸ばしているが、よく絡んでしまうので銀のばらが解いてあげてる。人間社会に現れるときはブルネット色の長い髪を持つ半身不随の妙齢の女の姿を取るため、銀のばらに車椅子を引かせている
銀のばら Ezüstrózsa
he/him/彼 一人称:自分/俺
ドナウ侯の従者であり世話役。見た目は軟派な雰囲気の漂う愛想のいい青年だが、時々言動が空虚になる。その気配は人間のようであり妖精のようでもあり、本人も「よくわからないけど気にしていない」と笑って話す。妖精伯の集う会議では司会進行を勤める。リデーツの汚染を除去する「銀の薔薇」の咲く庭園の管理者であり、空を駆ける霊馬トゥルルーが引く馬車を乗りこなす。手が隠れるほど丈の長い、レースで縁取られた袖が特徴的な上衣に黒地の刺繍入りジレとズボン、レースアップのロングブーツを組み合わせて着ていることが多い。
身体的特徴など
青みががった銀髪を胸部の高さまで伸ばしており、大きなリボンで一つに結っている。緑青の虹彩が入る銀の瞳。人間が生み出した武器は一通り扱えることもあってか、体躯はわりとがっしりしている。なぜか袖口から薔薇の蔓がひょっこり覗いていることがあり、「やっべ」と慌てて隠したりする。
七つ森のヨハーン Elfengraf Johann von Siebenwälder
he/him/彼 シスジェンダー 一人称:ボク
人間。最年長の妖精伯。顔を薄布で覆っており、今は誰も使わない弦楽器を片手にトランシルヴァニア地方(洪:エルデーイ)を転々としている。背筋がしゃんとしており声音は若者のものだが、高く結っている髪は白髪で、口調は高齢の老人そのものである。およそ数百年も行方不明となっている当代の竜について詳しい。既婚者だが、妻もまた竜とともに行方不明になっている。吟遊詩人を思わせる厚手のローブと襟巻きで全身を覆っており、顔どころか皮膚1つも見えないが……。
コンラート Elfengraf Konrad
30半ば(外見) he/him/彼 シスジェンダー ロマンティック・アセクシュアル/ゲイ 一人称:私
人間。魔法使いだが、ユクスの補助がなければ大掛かりな魔法は使えない。オーストリアのヴァッハウ管区およびザルツブルク公爵領を拠点とする妖精伯であるものの、普段はヴァッハウ渓谷の麓にひっそりと建つ古びた塔の教会で、ユクスと慎ましやかに暮らしている。養蜂で生計を立てており神父ではないのだが、望まれれば神父のように説教や告解、葬祭も行う。いつもほほえんでおり誰に対しても鷹揚な態度で接するが、時々胡散臭がられることをちょっと気にしている。銀の刺繍が施された小さな聖書を常に携帯している。
ユクスとは恋人の間柄として気の遠くなるような歳月を共に過ごしているが、ソドミーの罪及び国の定めた刑法で罪とされる関係性のため、人間社会との不要なトラブルを避けるべく表向きは伏せている。おしゃれには疎く特にこだわりはないため神父のようなローブを羽織っていることが多いが、私服はユクスのオーダーによって裁縫された、地味ながらも気品ある紳士服を着ている。
身体的特徴など
糸目。飴色の太く硬い髪。背が高く、神父のローブを羽織っているためわかりづらいがガタイもいい。
ユクス/アカシアの君 Üks/Regina apis acaciae
10代半ば〜20代後半(外見) he/him/彼 シスジェンダー ゲイ 一人称:オレ
元人間の、精霊との〈混ざりモノ〉。教会からは「悪魔」として扱われ秘匿・幽閉されていた存在。ドナウ侯やクラフト=エビング博士からは「アカシアの君(きみ)」と敬意をもって呼ばれている。表向きはコンラートの使い魔だが契約はしておらず、関係を知るものの前では堂々と恋人として振る舞っている。外見年齢は気分によって揺らぐため、少年と青年の姿を行き来している。蠱惑的な雰囲気と蜂蜜のような甘い香りを常に漂わせ、一般人のほとんどは目を合わせただけで衝動に等しい魅力に襲われてしまうという。コンラートに出会うまでは「ソドミーの罪」を逆手に取った〈悪行〉を重ねており、今でこそおとなしくしているが内心では人間社会を深く憎悪し続けている。
昔々にコンラートからもらった古いトランプを常に携帯している。洒落好き・派手好きで隅々までこだわりぬいたフェティッシュな着こなしをするが、19世紀に入ってから急速に進んだ紳士服の地味……もといシンプル化については「ねーわ」と常々思っている。
身体的特徴など
ニセアカシアの花のような髪と琥珀色の瞳。やや細身で重いものは持ちたがらない。少年の姿は小柄だが、青年としての背丈はコンラートと数センチ差くらいまである。人間だった時代に、現在のエストニアにあたる地域から流れに流れてきたとのこと。〈混ざりモノ〉の姿としては(人間の感覚からすれば)おどろおどろしい「悪魔さながらの」姿になるが、それでも一般人はデカダンスなその様に惑わされてしまうという。
ホルンの郵便屋
20以上(外見) They/them/彼人 一人称:私
人型の妖精だが、頭部は磨き抜かれたホルンの形をしている。ハンガリーを拠点に、帝国内の魔法使い・魔女・妖精宛の手紙や荷物の配達を生業にしている。頭部は人間の顔に化けることができるので一般人の目は欺くことができているが、ロッテを始めとする魔女や魔法使いの目には効いておらず、いつか魔法使いに対しても人間の顔に化けられるようになりたいと思っている。人間の郵便屋たちから大事に使われ続けた古いホルンを元に生まれた若い妖精で、同僚のハトの郵便屋に悪戯をしかけたりからかったりしては追いかけ回されている。道化師のような大袈裟な身振り手振りでお調子者の態度が目につくが、客から依頼された郵便物はたとえ宛先が戦下であってもオペレンツィアであっても届けることを誓っている。
身体的特徴など
頭部がホルンで、成人の人間の体型をしており背が高い。人間の性器を持っていない。長身のためか男と見られることが多いが、磨き抜かれたホルン頭さえ貶されなければどう見られようが特に気にしていない。逃げ足がとても早く隠れるのも上手。
義賊ヤーノシーク Jánošík
ハンガリー王国内の各地で魔法を使った窃盗や妨害行為を働いて世間を騒がせる悪党。しかしその対象が大抵悪どい噂の立つ権力者の人間ばかりのため大衆から人気を博してしまい、警察や国軍の頭を悩ませている。「ヤーノシーク」の精神、もしくは「ヤーノシーク」たらしめるギフトを継いだスロヴァキア人が代々務めているのではないかと目されているが……。
身体的特徴など
1896年時点のヤーノシークは、猫のように俊敏な動きでブダペシュトの夜を飛び回る姿を度々目撃されている。ヤーノシークに対峙したことがある一般人や警察、妖精騎士団の誰もがその顔を覚えていないという
ヘレナ・リシュコヴァー Helena Lišková
10歳 she/her 一人称:私
魔法使いのお嬢さん。ゴーレムや機械人形を蒸気のように可視化された魔力で動かして使役することが可能で、「レーヴ」と名付けた自律式ゴーレムを妖精の使い魔のように引き連れている。成人をもって空席となっているボヘミア・モラヴィア妖精伯を継ぐことが決まっており、今はプラハに住む〈理の魔女〉の下で修行と研究に明け暮れている。反乱を起こして死亡した先代妖精伯に育てられたが、その出生は謎に包まれている。いつもにこにこと笑っているが処世術として身につけているだけであり、「感情という感情が抜け落ちてしまっている」とクラフト・エビング博士から診断を受けている。
身体的特徴など
光が当たると深緑色に映える黒い猫っ毛を、ハーフアップでまとめている。大きな眼鏡をかけている。ゴーレムを扱えることからイディッシュの血統が混ざっていると思われるが、チェコ人の下で生活が長いこともあり扱う魔法はチェコ語とイディッシュ語が混ざっている
他(仮)
※大枠は決まっているキャラクターです。名前は決まっていますが、称号などは仮で置いてます
サシャ・イェラチッチ Vilagrof Saša Jelačić
20前半(外見) he/him/彼 シスジェンダー 一人称:儂
クロアチア王国拠点の妖精伯。兄貴風を吹かせる快男子であり、さっぱりした性格の青年。一方、ヨハーンやコレットを「じいちゃん」「ばあちゃん」と慕い彼らからも可愛がられるなど、年配者にも好かれる魅力の持ち主。持っているギフトが戦争向けに特化しているので単騎ではめったに出動せず、他の妖精伯の助っ人や護衛として動いていることが多い。姓はとある有名貴族のものだが出自は貴族ではない。クロアチア妖精伯を継承した者は代々この姓を名乗ることになっているため、本来の姓は別にある。
リディヤ・ツェリスカ Vilagrofica Lidija Celjska
20前半(外見) she/her/彼女 シスジェンダー 一人称:私(わたくし)
カルニオラ(現スロヴェニア付近)拠点の妖精伯。中世に断絶したとされる古い貴族の末裔であり、気高き貴婦人。様々な言語を駆使した交渉と駆け引きを得意とするため、他領域の精霊や人間社会の権力者とドナウ侯が会談する際には仲介役として立ち回り、臆せず交渉する。戦を野蛮で外道な行いと断言し毛嫌っているが、目的のためならば政治的な汚れ役も平気な顔で引き受ける。暇そうだからと理由づけて、クロアチア妖精伯を護衛としてよくパシらせている。
アーロン Krasnal-szlachta Aaron
ガリツィア・ロドメリア(現ポーランド&ウクライナ)拠点の妖精伯。ポーランド・リトアニア共和国の三分割による争乱時に、ドナウ侯の下に亡命してきた。霊鳥を従えている。ロシア帝国サイドに生き別れのきょうだいがおり、あちらの精霊の守人として仕えているらしい。
グラシの魔女コレット Feegräfin Colette von Glacis
8歳前後(外見) she/her/彼女 シスジェンダー 一人称:あたくし
ウィーン拠点の妖精伯。見た目は幼子の、かわいらしい佇まいのおばあちゃま。ヨハーンの次に妖精伯歴が長い。二つ頭の黒鷲が眠る都を守護をしていることから、めったにウィーンから出てこない。ウィーンから外に出てみないかと誘われても「そうねえ、王子様がお迎えに来てくれるならあたくしも考えるわ」と冗談めかしてはぐらかしている。プラハにいる〈理の魔女〉と何か因縁があるらしく、その名を聞くやいなや深い溜息をついてしまうが、ヘレナのことは実の孫のように気にかけている。
ノラ Nora
60〜70歳(外見) she/her/彼女 シスジェンダー
ボヘミア拠点の〈理の魔女〉。プラハのどこかにある工房で錬金術の研究をしている、魔女のおばあさん。本名はエレオノーラ(Eleonora)だが、略称のノラで呼ばれることが多く本人もノラと名乗っている。睡蓮の仕立屋とも取引している。背が高く背筋もピンとしているが、柄が悪い。ヘレナの保護者。ウィーンの妖精伯と何か因縁があるらしく名前すら聞きたがらない。
チロル、トリエステ、ボスニア・ヘルツェゴビナなど……ドナウ侯傘下にするかで悩んでますが、妖精伯にあたる役柄の魔法使い/魔女がいる予定。